以前なら跨げた
◆在るものが辛く無いことに怯え
◆そろそろクワガタに擬態してくるんじゃないか
◆はじめからピースなぞ無いやりくりのパズル
◆血みたいな部分に自分の魔を見る夕焼け
◆しょうゆ味にしとけばよかった
◆アルバムの先生の年齢不詳さ加減
◆見えないのに脅かされて買う除菌グッズ
◆空っぽのポストに雨の配達
大人になってポストが嫌いになった
◆ 敵は紫外線ですねとダース・ベイダーみたいな人を見て心の中で
◆ B型ですけどとふて腐れたような顔で
◆ シャンプーが目に沁みるが怖いから開けたまま
◆ 汗までファンデーションに塗りこめ仕事に向かう
◆ 手をたたいて笑う人が苦手だ
◆ 落ちている蝉は侮れないことをやっと知る
◆ 犬がいないからあの人かどうか自信がない
◆ 停電後に沸かした風呂の量に驚く
◆お通夜の知らせにどれぐらい親しかったか迷う
梅雨の居ぬまに洗濯
◆亡き人の家の庭にも花の咲く
◆自転車の雪崩来たオイどうする
◆甘露飴の月をほおばりほおばり夜道を歩く
◆特売の野菜をひとつ買ってはみたものの
◆青空を贅沢に使いに行く人を見送る
◆テレビの人の名前が思い出せず無駄に夜を過ごす
◆青空を広げて干して梅雨を叩く
◆昔モテたのは分かったから
◆その人怖けりゃアイコンまで怖い
ゆるキャラもう飽きた
◆それでも騙されて払える金があることを少々妬む
◆まだ出来るかと3秒だけ両手離し
◆脳みそみたいな迷路ばかり書いてたあの子の今
◆まだ最後まで言ってない
◆助けた蜘蛛に恩を着せる
◆体育祭の後はしばらくちょっと仲が悪い
◆笑顔が老ける人
◆45リットルの袋の中身が40リットルに入れられず怒るゴミ回収の朝
◆曲のチョイスがおかしいスーパー
◆なぜスマホにしないのかは聞き飽きた
◆愛想良くしたが無愛想で返される
あの人は絶対ラーメン屋に入るという足どり
◆ 候補者を消去法で選ぶにしても
◆ 売ったり買ったりしてよいのか人間のものなのか月は
◆ 封の開いたウインナーすら持っていけと渡す母の手の皺
◆ 冬眠出来る細胞が欲しい
◆ 休日の湯船の窓から見る雪の暖かさ
しまったお年玉付き年賀状じゃなかった
◆ 一週間分の食費を甥のお年玉袋に入れる
◆ その曲自体が懐かしいというわけではなく
◆ バナナ世代と言うテレビにバナナの栄養なめんなよと呟いてみる
◆ いいところでナウシカ死んだの?と聞いてきたのが嫌いになった原因
◆ 通行量を計るスイッチの音にちょっと息苦しくなる初出勤の朝
◆ 犬と人が同じ歩幅の老老散歩
◆ 元気な頃の遺影は最期の姿を思い出さないため
◆ 居留守にしたがメーターが回っているのを見られたかもしれない
◆ 地域パトロールなのにどっかの犬にほえられている
巨大生物というタイトルに弱い
◆スマホのキラキラ年賀状メールに未だに返信できないでいる
◆背後の足音にうぬぼれる程若くはない
◆母に似てきたと美容室の鏡にちょっと落ち込む
◆店の片隅の鏡でそっと服をあててみる
◆この時期はこたつむりになって冬眠したい
◆おはようございますおめでとうございますことしもよろしくおねがいしますがめんどくさい